どんなふうに、言葉を見るか。

伝え方を工夫すれば助かる場面もあれば、うまく言うことより、口を出す前に考えた方がいい場面もあります。

漢字の成り立ちを調べる長い文章と、何気ない言い方が好きだという短い文章。その両方から、柳沢直哉のものの見方を知っていただけたらと思います。

ここでは、Facebookで公開した三編を紹介します。気になるものからどうぞ。

  1. 「相手のために言った」。 — 助言したくなったとき
  2. 「理解」を、二つの字から考える。 — 漢字から、考えを分けてみる
  3. 「ちょっと待って、今の面白い」。 — 何気ない言い方が、好きになる

01 / 助言したくなったとき

「相手のために言った」。

役に立ちたい気持ちの中に、自分の考えを認めてほしい気持ちも混ざる。その疑いを、自分にも向けておきたい。

2026年10月26日公開の文章

「相手のために言った」。
でも、相手は黙ってしまった。

たとえば、仕事の悩みを話し始めた人に、
「それなら、上司に相談すればいい」と返す。
「考えすぎだよ」とも付け加える。

自分では、役に立つことを言えたつもりでも、
相手はまだ、何が嫌だったのかを
話している途中だったかもしれない。

「うん」と返ってくると、
「分かってくれた」と思いたくなる。

でも、それ以上話すのを
あきらめただけ、ということもある。

僕は、頼まれていない助言をしたあとに、
「相手のためだった」と言って
話を終わらせたくありません。

教えてあげたい気持ちの中に、
自分の考えを認めてほしい気持ちが
混ざることもあると思うからです。

すぐ伝えた方が助かることもある。
提出前の間違いに気づいたときや、
「どうしたらいいと思う?」と聞かれたとき。

ただ、言った自分がすっきりしたからといって、
相手の役に立ったとは限らない。
そこは、自分でも気をつけておきたいです。

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02 / 漢字から、考えを分けてみる

「理解」を、二つの字から考える。

字の成り立ちを確かめたあと、経験から得たものと、今も納得できないことを分けて言う話へ。

2026年10月26日公開の文章

「理解」という言葉を一字ずつ調べると、
玉と牛が出てきます。

まず、「理」。
左側は「王」と同じ形に見えますが、この字では「玉」に関わる部分。
右側の「里」は、「リ」という音を表す部分です。

漢字ペディアでは、「理」はこの二つを組み合わせた形声文字とされています。
形声は、意味を示す部分と、音の手掛かりになる部分を組み合わせる作り方です。

その成り立ちの説明に出てくるのが、玉の加工。
玉のすじめに沿って切り分け、美しく磨くことに関わる字だと説明されています。

「理」には、すじめや模様という意味もあれば、
物事の筋道という意味もある。
「理由」「道理」のように、考えることに使う字にも、物のすじ目に関わる説明があるんですね。

次に、「解」。
こちらは「角」「刀」「牛」の三つからできた会意文字です。
会意は、いくつかの部分の意味を組み合わせて、字の意味を表す作り方。

同じ辞典では、牛の角を持ち、刀で裂き分ける様子から、
分ける、そして分かるという意味を表すと説明されています。
「分解」も「解説」も、同じ「解」を使います。

玉のすじ目に沿って分ける「理」と、牛を切り分ける「解」。
この二字が「理解」という言葉に入っている。
ここから僕は、気持ちを言葉にするときのことを考えました。

たとえば、大変だった仕事を振り返って、
「あれは、いい経験だった」と話す場面。

何度も資料を作り直して、説明する力はついた。
助けてくれた人もいて、その人には感謝している。
でも、夜遅くに突然変更を言われ、何日も残業したことには、今も納得できない。

こういう気持ちを、一つの感想にまとめるのは難しい。
身についたことがあるからといって、
あの頼まれ方までよかった、とは思えないからです。

「役に立った」と認めた途端に、
「つらかった」とは言いにくくなる。
反対に、「嫌だった」と言えば、得たものまで否定したように聞こえることもある。

だから、僕は分けて言えるようにしたい。
「学んだことはある。でも、あの進め方には納得していない」。

これなら、次の仕事にも残したいことと、
次は変えてほしいことを、それぞれ話せる。
経験全体を、よかったか悪かったかの二択にしなくてもいい。

もちろん、自分で「いい経験だった」と思えた人の言葉は、その人のものです。
ただ、まだそう思えない人にまで、
同じまとめ方を急がせたくはありません。

漢字の成り立ちが、気持ちの扱い方まで決めてくれるわけではない。
それでも、この二字を調べて、
言語化するときに何を分けて考えたいのかが、僕には少しはっきりしました。

納得していることと、していないこと。
感謝している人と、変えてほしかった頼まれ方。
それぞれを言葉にできれば、自分の経験を無理にきれいな話へまとめなくてもよさそうです。

字の説明:漢字ペディア「理」「解」(『角川新字源 改訂新版』)を参照。

漢字の解説で参照した資料:漢字ペディア「理」・「解」(なりたち:『角川新字源 改訂新版』)。字源の説明と、その後の筆者の考察は分けています。

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03 / 何気ない言い方が、好きになる

「ちょっと待って、今の面白い」。

話を先に進めず、戻って聞いてくれる。その小さな言い方に惹かれる理由を、短く書きました。

2026年10月26日公開の文章

「ちょっと待って、今の面白い」。

話を先に進める前に、こんなふうに戻ってくれる人が好きです。

何気なく言ったことを、もう一度聞こうとしてくれる。
何が面白かったのか、こっちも聞きたくなる。

話を止める「ちょっと待って」に、こういう使い方もあるのがいい。

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言い直しや、違う感じ方も。

読んでいて「自分の場合は少し違う」と思うことがあれば、その違いも大事にしたいです。まだ説明しきれない気持ちを、急いで答えにしなくてもいい。

Facebookでは、日々の言葉について書いています。気になる文章があれば、使ってみたい言い方や、引っかかったところを、ご自身の言葉で聞かせてもらえたらうれしいです。

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